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トランプの大統領選の勝利の裏には謎の企業が?SNS情報操作を描くNetflixの衝撃ドキュメンタリー『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』

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ライター:#久保憲司
トランプの大統領選の勝利の裏には謎の企業が?SNS情報操作を描くNetflixの衝撃ドキュメンタリー『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』
Netflixオリジナル映画『グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル』独占配信中

人間の意識って簡単に操作できるの!? 米大統領選の裏で暗躍した謎の企業

Netflixオリジナルのドキュメンタリー作品はおもしろくて、ためになるので、新聞を読むかわりに観ているのですが、『グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル』は、「これからぼくらの未来どうなるねん」という恐怖を感じました。

どういう内容かと言いますと、みなさんも名前はなんとなく聞いたことがあるであろうイギリスの<ケンブリッジ・アナリティカ>という政治コンサルティング会社が、2016年のアメリカ大統領選挙時にFacebookからゲットした情報を分析して、選挙民の気持ちを変える情報をタイムラインに効果的に流し、トランプ大統領を勝利に導いていたかもしれない、というドキュメンタリーです。

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怖いのは、これをやる前にイギリスのブレグジットの国民投票に関して、予行練習をしていたということ。ホンマか!

これと同じ手法で、内定辞退率を企業に売っていた会社も日本にありましたね。日本でも、こういうことがやられるかもしれません。いや、もうやられているのかも。でも、こういうマイクロターゲティングという手法(個人情報を分析して得たデータから効果的な戦略を立てる)は、ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(2013年~)でもネタの一つとして使われていましたが、実を言うとこの手法について、アメリカの政治学者の多くは懐疑的なんです。

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要するに“サブリミナル効果”みたいなものです。本当に効果があるのかどうなのか、よく分からないということ。そうですよね、そんなに人間の意見って簡単に変わらないですよ。

真相はすべて闇の中……渦中のIT長者ザッカーバーグも我知らぬ顔

2016年の大統領選挙の時に、ヒラリーを中傷する変な記事がSNS上に流れてくるようになりました。でもそれは、ヒラリーが演説中に咳をしたらコップに痰が入ったというフェイク記事で、「そんなのシェアするなよ気持ち悪い」というような内容だったんですが、陰謀論とかが好きそうな人たちが、それを理由に“ヒラリーは負ける”みたいなコメントを書いていました。そういうのを見て、「あっ、ヒラリーはダメなのか、トランプに投票しよう」って、なるか?

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アメリカは二大政党制で、選挙のたびに勝つ政党が入れ替わる“スイング・ステート”と呼ばれる州があるのです。要は絶対に現状に満足しないというか、現政権にお灸をすえたいと思っている州です。これらの州を制覇した者が大統領選挙に勝ってきたわけですが、今回ヒラリーはこれらの州であんまり選挙活動をしていません。アメリカは景気もいいし、自分たちの政党のお陰だと思ってくれているだろうと高をくくっていたのでしょう。それに反してトランプは、これらの州を何回も訪れていたのです。つまり、このドキュメンタリーに登場するケンブリッジ・アナリティカ社は、これらの州でマイクロターゲティングをやったと。

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ケンブリッジ・アナリティカ社が本当にアメリカの大統領選挙に関与したのかが、このドキュメンタリーの争点なんですけど、問題なのは、この手法が本当に効果があるのかどうかなので、実際に関与したかどうかは暴かれていません。トランプ側がケンブリッジ・アナリティカ社に、お金をいくら払ったかも分からない。本当に選挙の応援を頼んだかどうかも分からない。全て闇の中なのです。

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これらの事件というか“疑惑”で、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグが上院公聴会に呼ばれているんですが、彼のキョトンとした顔を見ていると、これ誰も何も分かっていないな、という感じがします。このドキュメタリーを見るまで、あの映像は一体なんだったろうと思ってたんですが、あの顔は「Facebookのビジネスモデルが、ユーザーから集めた大量の個人情報が支えているというのは誰も疑わない事実だし、みんなそれを納得して使っているのに、いったい俺は何でここに呼ばれているんだろう?」という顔だったんだなと気づきました。多分、その裏には「個人情報を使って人の意識を変えられるなんていう疑似科学を本当に信じているのか、この上院議員たちは?」という思いだったんでしょうね。

かといって「そんな個人情報で人の意識なんか変えられるわけないっしょ」なんて言ってしまったら個人情報を高く売れなくなるから、死んでも言えないでしょうしね。ちなみに広告業界なんて、そんなものですよ。そういう広告業界の胡散くささを楽しみたい方は、ドラマ『MAD MEN マッドメン』(2007年~)をお勧めします。

結局はお金の問題? 胡散くさい連中が跋扈する国政の闇

このドキュメンタリー、すごい胡散くさいところから始まるんですよね。今回の告発のキーパーソンであるブリタニー・カイザーからして胡散くさい。Netflixオリジナルシリーズ『ストレンジャー・シングス』のダスティン・ヘンダーソンに似た人懐っこい笑い方をする女性なんですけど、彼女の登場は、アメリカの砂漠で開催されるフェスティバル<バーニングマン>に参加するところから始まるんです。

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彼女はもともと民主党を手伝っていたんだけど、お金がもらえないから共和党を応援するようになった。その関係でケンブリッジ・アナリティカ社で働くようになったのです。要するにリベラルから保守に意見を変えたということなんです。

今回の一連の闇の根本的な問題も、これなんですよ。お金。でも、本当にお金が効果があるかどうかなんて分からないんです。というか、そこをちゃんと調べるべき。そこをやっていなかったのが、このドキュメタリーの残念なところなんですけど。これからの世の中どうなるか、興味津々の人は観ておいても損はないドキュメンタリーかと。

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ネタバレになるかもしれないですけど、今回の一連の騒動でケンブリッジ・アナリティカ社は倒産してます。そんなものですよ。正義は勝つというか、なんというか。

あと、ケンブリッジ・アナリティカ社の役員の一人って、あのスティーヴ・バノンなんです。陰謀論の親玉みたいな男ですよ。バノンももともとはマイケル・ムーアに憧れて映画を撮っていたんですよね。作っていたのはムーアとは正反対の映画だったんですけど。ムーアの逆張りをしたかったということなんでしょうね。それでトランプ大統領の首席戦略官兼上級顧問まで登りつめたのはすごいと思いますが、みんな騙されすぎだろ、とも思います。

文:久保憲司

『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』はNetflixで独占配信中

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『グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル』

2016年の米国大統領選挙をきっかけに明らかになったSNSの闇。その象徴ともいうべきデータ会社ケンブリッジ・アナリティカと一連の事件に関与した人々を追う。

制作年: 2019
監督: