気鋭の若手監督が自らを投影! 30歳の等身大の苦悩と虚無感を描く
完成作品を評価するのではなく映画企画を募り、受賞作品を製作から配信まで総合的にサポートするという革新的なプロジェクト「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」にて、2016年度の審査員特別賞を獲得した箱田優子。そして2019年10月11日(金)より、CM界の第一線で活躍するクリエイターでもある箱田が監督を務めた映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』が公開される。
本作は、箱田自身を投影させた30歳のCMディレクター・砂田夕佳を主役に、息苦しさを感じる現代の日本で働くアラサー女性の姿を等身大で映し出す、赤裸々なポエムのような作品に仕上がっている。
監督の分身ともいえる砂田を演じたのは、近年これまでのイメージを覆すような作品への出演が印象的な女優・夏帆。本作でも過去のイメージを振り払うかのように、CM業界の荒波を毒舌で乗り切る“戦う女性”を熱演している。
もう一人の主人公、砂田の“秘密の友だち”である清浦あさ美を演じたのは、見事な日本語も披露した主演作『新聞記者』(2019年)がアジア各国で大きな話題を呼んでいるシム・ウンギョン。本作では、持ち前のコミカルかつキュートな魅力で存在感を放っている。
自己肯定感が低い人の心をカリカリと引っ掻く“あるある”ネタ満載
タイトルの“ブルーアワー”とは、1日の始まりである日の出と、1日の終わりの夕暮れに、一瞬だけ世界が青一色に染まる薄明かりの瞬間のこと。対面した人物の輪郭は判別できるが表情までは見えない、淡く微妙な一瞬だという。
CMディレクターとして活躍する主人公の砂田は日々仕事に追われながらも、優しく理解ある夫がいて、その裏で不倫関係を続ける恋人なんかもいたりして、それなりに充実した日々を送っているように見えるが、心の奥にはぽっかりと虚無感を抱えている。実は空っぽな自分を守るかのように、口を開けば出てくる攻撃的な言葉が痛々しく生々しい。
ある日、砂田は病気の祖母を見舞うために実家のある茨城へ帰京することに。「弱っている姿を見たくない」と、祖母がある程度回復するのを待って顔を出した砂田からは、現実と向き合う勇気を持てない弱さが垣間見えて、なんだか他人事とは思えない。そんな彼女に同行するのが、幼いころに夜明け前のブルーアワーに出会って以来、いつも彼女のそばにいてくれた天真爛漫な“秘密の友だち”、清浦だ。
たどり着いた大嫌いな故郷、“ディープ茨城”で直面するのは、自己肯定感が低めの自分を作り上げた環境。文化的知性を全く感じらられない、方言丸出し・田舎丸出しの雰囲気、黒歴史が詰め込まれた自分の部屋、年老いてますます話が通じない両親、相変わらず理解しがたい兄、死にゆく祖母の細くなってしまった指……。これでもかと突きつけられる現実に、彼女は何を選択するのか。
結局のところ、この物語で彼女が何を選択したかという部分は、観客にゆだねられる。ありのままの姿を見せるだけで、明確な答えは用意されていない。ある意味、ドキュメンタリーと言えるかもしれない。ブルーアワーは彼女にとって、果たして夜明けか、夕暮れか。ある一人の女性の日常を切り取ったポエムのような映画を通じて、観客は何を感じ取るのか。ぜひ劇場で確認してほしい。
劇場公開前に、監督自ら描いたコミックが異例の先行リリース
本作のコミカライズ版、つまりマンガ作品が、劇場公開に先駆け2019年9月6日(金)に全国書店で販売される。東京藝術大学の絵画科出身という監督だけあって、その絵コンテの完成度に驚いた担当編集がコミックの出版を決定したというのも大いに納得のクオリティだ。
監督自らが描いた繊細なタッチのキャラクターや風景、台詞の中には、映画とは微妙に異なる箇所もあり、映画とコミックの両方を見ることで作品への理解も一層深まるだろう。
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『ブルーアワーにぶっ飛ばす』は2019年10月11日(金)よりテアトル新宿、ユーロスペースほか全国公開
コミック「 ブルーアワーにぶっ飛ばす」
<著者> 箱田優子
<発売日> 2019年9月6日(金)より全国順次発売
<定価> 本体777円+税
<発売> 株式会社徳間書店