完璧ゆえにスルーされがちなエルトン・ジョンの名曲群
友達の家に行くと、なんとなく音楽をかけてくれたりする。これ聴いて! みたいなオススメのものから、とりあえず買ってみたものとか。その中でエルトン・ジョンについては、本当に良質すぎてスルスル通り抜けてしまうね、なんて言って楽しんでいた記憶が残っている。
つまり違和感の残らない、ある種の完璧さや整いすぎた印象を受けていて、そりゃそんな高級食材使ってたら美味しいだろ、と言いたくなるような、あらためて良さを見出す必要もないほどの音楽然とした完成度、安心して観られるハリウッド映画のような聴こえ方だった。
生まれ持った才能、複雑な家庭環境、人生の転機を名曲と共に描く
そんなエルトン・ジョンの伝記映画『ロケットマン』は、彼の幼い頃からの非凡な音楽的才能と、それを育てた(決して良いとは言えない)家庭環境、そして成功の裏で彼の精神を蝕んでいった周囲との関係性を描きながら、楽曲が生まれるきっかけとなった決定的な出来事を、数々の名曲と共に知ることができる構成になっている。
前述した彼の楽曲の印象は、曲を聴いて漠然とそう思っていただけだったが、この映画を観て納得した。そもそもの天性の才能による作曲能力に加えて、成功するまでの圧倒的な努力、そして完成度の高いプロダクションを行う力があったために、ああいう形になっていたと知ることができたからだ。
まるでハリウッド映画の登場人物!? 天才エルトンの波乱万丈伝
ただ、そのことを彼の人生の歩みとともに知ることで、天才も人間であるということが改めて理解できて、急に身近に感じられた。すんなりと彼に共感させてくれる内容になっているし、劇中で流れる曲の歌詞には思わず涙してしまった。本当に、ハリウッド映画の登場人物のような波乱万丈な人生を送っていて、本人は辛いよなとも思った。
自分の趣味や、好きになりそうなものの傾向はなんとなくわかっていて、普段そういったものばかり楽しんでいる。でも楽しみ方を知らないだけで、先入観でなんとなくわかった気になって通り過ぎていくものも多いよなあと、改めて気付かされた作品だった。
文:川辺素(ミツメ)
『ロケットマン』はAmazon Prime Videoで配信中
『ロケットマン』
輝かしい功績で知られる伝説的ミュージシャン、エルトン・ジョンだが、その成功の裏には悲しくも壮絶なドラマがあった。彼の幼少期から鮮烈なデビュー、そして愛されたいと常にもがき続けた半生を美しく描く。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |