ギターショップは運命の1本を見つける真剣な出会いの場
ギターショップってなぜだか緊張するんですよね。もちろん店員さんの目も気になりつつ、ずらっといくつも並んだギターの“圧”って、やっぱりあるものです。
楽器を弾かない人にとってはチンプンカンプンかもしれないんですが、見た目がおんなじでも、使われている木材や作られた年代によって音は変わってくる。もし、それらも全く一緒だったとしても、全く同じ音が出るということは、絶対にない。人間と同じように、みんな全然違う奴ら。
そんな中から一つ、「君だ!」っていう運命の相手を見つける、真剣な出会いの場なわけです、ギターショップって。
職人と表現者 ― 似て非なる人間同士の味わい深い会話
『カーマイン・ストリート・ギター』、この映画は、ニューヨークの建物の廃材を使ってギターを作る職人・リックの元にいろんなミュージシャンやアーティストが来て、他愛のない世間話をして、ギターを弾いて、「うわー、これやばいね」つって唸って買っていく、その風景がひたすら描かれる映画です。
弟子のシンディが「古くさい学校みたい」と表す工房の雰囲気が単純に楽しいし、”職人”と”表現者”という、似ているようで違う人間同士の会話はとても味わい深い。ギターができるまでの物語と、人間がお店を訪れるまでの物語が交錯する、「音楽が生まれる前の前の瞬間」をじっくり目撃できるわけです。音楽ファン、ギターファンにはたまらない。
リックの言葉はカジュアルだけど、全てが教訓めいているから、聞き逃せない。例えば、隣の物件を持ってる不動産屋に言い放つ、「どの職場にもギター弾きがいる」というような、何気ない一言にある重み。重みというか、含み。豊かさすごいなあと。一つの場所から変わりゆくニューヨークをじっと見てきた人だからこそ出てくるセリフですよね。僕もなんかのタイミングで行ってみたいな、と思いました。
文:夏目知幸(シャムキャッツ)
『カーマイン・ストリート・ギター』は2019年8月10日(土)より新宿シネマカリテ、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
『カーマイン・ストリート・ギター』
伝説のギタリストたちを虜にする職人は、建物のヴィンテージ廃材から、世界でひとつのギターを生み出す。
ルー・リードやボブ・ディランも来店! そのギターを手にすれば、誰もが笑顔溢れ出す。
制作年: | 2018 |
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監督: | |
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