今年日本では、主演作が『無名』『ボーン・トゥ・フライ』『熱烈』と立て続けに3作も公開されたワン・イーボー。まさに<ワン・イーボー・イヤー>とも言える2024年を送った彼のトリの作品(!?)として、2022年に主演した短編『我的朋友~映画に愛をこめて~』(22・中国)が、映画配信サービス「JAIHO」にて日本初独占配信がスタート。
主演ワン・イーボーが魅せる<静>の演技
本作を手掛けたのは、長編デビュー作の『八月』(2016)が「第53回金馬奨」最優秀作品賞、最優秀新人賞、国際批評家連盟賞を、短編『下午过去了一半(原題)』(2020)が「第71回ベルリン国際映画祭」短編映画部門 銀熊賞を受賞した、内モンゴル出身の新鋭チャン・ダーレイ。ワン・イーボー、ジョウ・シュンの2人がブランドアンバサダーを務める「CHANEL」と中国最大級のインディペンデント映画祭「西寧FIRST青年映画祭」とのコラボレーションによって制作、「第73回ベルリン国際映画祭」短編映画部門にも出品。ラストは、フランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』(1959)が流れるなど、映画への愛と人間への温かいまなざしに満ちた作品となっている。
1990年、中国のとある地方都市。病身の母親と暮らすチョウ(ジョウ・シュン)は、テレビで流れるアジア競技大会の閉幕式を見てひと時の安らぎを感じていた。翌朝、チョウが受付係として働く工場では、アジア競技大会の垂れ幕やパンダのマスコット「パンパン」の撤去作業が行われている。そこへ、遠方から戻ってきた詩人のリー(ワン・イーボー)が訪ねてくる。その夜、工場内の映画館で従業員とその家族向けに『大人は判ってくれない』の上映会が催され、チョウは鑑賞券の配布ともぎりを担当していた。そこへ、リーが再び訪ねてくる…。
予告編は、遠方から戻ってきた詩人リーが、工場で開かれることになった映画の上映会に参加するため、会場を訪ねるシーンを捉えたもの。ぶっきらぼうに対応するチョウと、無言でチケットを手渡すリー。劇中全体を流れる、あくまでも淡々と、静謐に進んでいく時間を印象的に切り取ったものとなっている。
場面写真は、詩人リーの静かな日常を切り取ったもの。ダンスや歌への高い評価のみならず、作品ごとに全く違ったキャラクターになりきる俳優としての圧巻の存在感と演技力も話題のワン・イーボーが醸し出す<静>の演技をフィルムに映し出した印象的なカットとなっている。
『我的朋友~映画に愛をこめて~』はJAIHOにて独占配信中