最大のウリはマ・ドンソク自身! これは“俺たちのドンソク映画”だ
『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)以来、マ・ドンソクはあっという間に新たなアジアのアクションスターになった。いや、まだ日本ではメジャーとは言えないかもしれないが、気づいている人は気づいているし、気づく=熱狂だったりもする。
いわゆるイケメンではない。実際のところ、ずんぐりむっくりのオッサンである。しかし、映画の中の彼はとてつもなくカッコいいから不思議だ。武骨な中に愛嬌もある。
そんなマ・ドンソクの新作、韓国で初登場1位を記録した『無双の鉄拳』は、『犯罪都市』(2017年)にも連なる“マ・ドンソク映画”だ。全盛期のジャッキー・チェンやシルヴェスター・スタローンの映画がそうだったように、マ・ドンソクの魅力を引き出し、そのことで観客を満足させてくれるのである。
武器は腕っぷし! ドンソク兄貴が掴む、投げる、ぶん殴る!!
キム・ミンホ監督によると、本作の準備期間は5年。それだけの時間をかけて「マ・ドンソクにしかできない作品に仕上げた」とのこと。その言葉は、映画を観れば納得できる。
人身売買組織に妻を誘拐された男が、自力で闘い、救出しようとする。シンプルな筋立てだがダークなムードはかなりのもの。かつて“雄牛”と呼ばれ恐れられた主人公ドンチョル(ドンソク)を助けるコメディリリーフの2人や、どこかジョーカー風味の悪役キム・ソンオもインパクト充分だ。
もちろん、最大の見どころはマ・ドンソクのアクション=バイオレンスだ。その武器はタイトルどおり拳、つまりパンチである。韓国映画と言えば“手より先に足が出る”というイメージもあるが、だからこそ掴む→投げ飛ばす→ぶん殴るというファイトスタイルが新鮮に映る。
マ・ドンソクのアクションはシンプルで豪快、だから痛快!
ハリウッドがクンフーを取り入れてから時が経ち、トニー・ジャーがムエタイを全面展開し、MMA(総合格闘技)もトレンドになった。そういうアクション映画の流れからしても、マ・ドンソクの“パワー殺法”は異色だ。レスラーで言えばスタン・ハンセンやビッグバン・ベイダー的。実際にプロレス技も使ってみせる。シンプルで豪快、だから痛快なわけだ。
そのパワフルさがエスカレートし、本作では怪獣映画ばりの演出も。しかしそれがギャグにならず、確実に“燃える”場面になっているのがマ・ドンソクの持ち味なんだろう。マーベル・シネマティック・ユニバース作品『エターナルズ』へ出演という話題もあり、これからさらに出世していくはず。序盤で見せる人のよさ、妻には頭が上がらない感じも含めて、マ・ドンソクの魅力を堪能してほしい。
文・橋本宗洋
『無双の鉄拳』は2019年6月28日(金)よりシネマート新宿・心斎橋ほか全国順次ロードショー