「第76回カンヌ国際映画祭」ある視点部門に出品され、ハリウッド・レポーターが選ぶ<カンヌで見るべき20本>に選出。「第96回アカデミー賞」国際長編映画賞では、シンガポール代表となった注目作『国境ナイトクルージング』が、10月18日(金)より公開される。このたび、メイキング映像が解禁。さらに、著名人から推奨コメントが到着した。
若者だった全ての人へ贈る珠玉の青春ドラマ
本作は、中国の東北地方、延吉(えんきつ)で、上海から来たエリート会社員のハオフォン(リウ・ハオラン)、バスガイドとして観光案内をしているナナ(チョウ・ドンユイ)、叔母の食堂を手伝っている料理人のシャオ(チュー・チューシアオ)の3人が出会い、冬の延吉をクルーズ(ぶらぶらと観光)する中で、心に変化が起こる様を煌めく映像美と叙情的音楽で綴る青春映画。
主演は、2021年に日本でもスマッシュヒットを記録した『少年の君』での真に迫る演技が記憶に新しい、人気実力を兼ね備えたチョウ・ドンユイ。アンソニー・チェン監督とは本作が2度目のタッグとなり、脚本のない段階で監督からオファーされ快諾。人生に迷った自分の経験を重ねながら、ノーメイクでナナの孤独を表現している。極寒の町に足止めされるハオフォンには、大人気シリーズ『唐人街探偵』(15~)で天才探偵を演じたリウ・ハオラン。増量と髭を伸ばす役作りで、心をどこかに置き忘れたエリートを静かに演じている。ナナに片思いするムードメーカーのシャオには、Netflix映画『流転の地球』(19)、『あなたがここにいてほしい』(21)のチュー・チューシアオと、中国の人気実力派キャストが結集した。
監督を務めたのは、デビュー作『イロイロ ぬくもりの記憶』(13)で、「第66回カンヌ国際映画祭」カメラドールを受賞したシンガポール出身のアンソニー・チェン。撮影は『少年の君』(21)のユー・ジンピン。
アンソニー・チェン監督「これは癒しを与える作品だと思う」
メイキング映像は、デビュー作『イロイロ ぬくもりの記憶』(13)で、「第66回カンヌ国際映画祭」カメラドールを受賞して以来、「古風で落ち着いた映画を撮る」と言われてきたアンソニー・チェン監督が、「今回は新たな挑戦」「ありきたりな青春ドラマではない」「特別な映画だ」と自信をのぞかせる姿が、映画のシーンや撮影風景、「第76回カンヌ国際映画祭」での様子も交えながら映し出されて始まる。
そして、シンガポール出身のアンソニー・チェン監督が、中国の延吉を舞台にした理由として、「風情のある都市を探してたどり着いた」と明かし、「ほかの中国の都市と全く違っている」と語る。朝鮮半島との国境がすぐ近くにあり、漢字とハングルが混在するこの地域は、両国の文化が混じりあい、国内外から多くの観光客が訪れるほど人気の場所なのだ。
その後は、キャストのリウ・ハオラン、チュー・チューシアオ、チョウ・ドンユイがそれぞれ、監督の演出へのこだわり、撮影の仕方について触れ、楽しそうに笑顔でふざけあう貴重な撮影風景が収められている。最後に監督は「本作を通して、若者の感情に関する、僕の観察と表現を見てほしい」と観客に訴え、「これは癒しを与える作品だと思う」と締めくくっている。
<コメント>
是枝裕和(映画監督)
本当に大好きな作品。行き場のない3人の若者たちが、偶然の出会いによって徐々に変化してゆく——。その姿がとても印象に残る素敵な映画だ。
山内マリコ(小説家)
さびしさは互いを引き寄せ合う。寒さが人をもっと近づける。現代中国の若者が抱く虚しさがひりひりと伝わる。それは絶望的であるのと同時に、とても甘美だ。
砂原良徳(ミュージシャン)
近年のドラマや映画などのコンテンツは台詞や効果音、音楽などの演出を用いて
そのシーンがどの様な意味を持つかをハッキリさせる傾向にあるが、本作にはその様な過剰な演出はない。
音楽や効果音の使用も最低限にとどめられていて鑑賞者各々の解釈を尊重している点で非常に好感が持てる。
改めて時間を用いる音楽や映像などの表現において「間」の大切さを再確認することが出来た。
高野寛(ミュージシャン)
極彩色のネオンと氷を噛み砕く音。
水墨画のような山並みと白い息。
アイスキューブのようなシンセサイザーの音の粒。
涙。
すべてが絡み合って、
美しく儚い心の移ろいを描き出した。
小谷実由(モデル)
氷を噛み砕くように全てがどうでもいいと思う気持ちの内側には、本当はひとりはイヤで、前に進みたいという気持ちが沈み込んでいる。なんでもないような時間がそんな凍った気持ちを溶かしてくれることもある。
門間雄介(ライター、編集者)
チョウ・ドンユイの儚げな表情は、心の底に燻るものを雄弁に伝える。
夢や理想に破れた者たちの、それでも失われていない何かを燃やすような、刹那の青春劇。
胸を強く打たれた。
ISO(ライター)
迷路で彷徨い疲れた若者たちが、凍てついた世界で暖をとるよう優しく撫であう。
偶発的で、刹那的な出逢いが道を示すことだってあるのだから、そう簡単に人生は諦められない。
『国境ナイトクルージング』は10月18日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開