シャマラン監督は是か非か問題
長い映画の歴史において、M・ナイト・シャマランほど叩きこき下ろされ、また熱烈に愛される監督はいないかもしれない。
代表作にして超ヒット作『シックス・センス』が公開されたのは1999年。「僕、死んだ人が見えるんだ」という涙目のハーレイ・ジョエル・オスメントくん、その理解者のように見えるブルース・ウィリス、物陰に潜む顔色の悪い少女……。「全米No.1ヒット!」と銘打たれたテレビCMは、お茶の間の関心を鷲掴みにした。
その後も続いた商業的な成功を振り返れば、いまだに“ああ『シックス・センス』の人ね”という程度の知名度しかないことに少なからず違和感を覚える。この微妙な注目度の理由としては、2000年代に入ってから手掛けた作品が連続して激しい賛否を巻き起こしたことが挙げられる。悪名高きラジー賞に目をつけられたことも要因の一つだろう。
シャマランのキャリアざっくり振り返り
インド系アメリカ人として大学の芸術学部で映画製作を学んだシャマランは、1992年の処女作『Praying with Anger』が商業作品として一定の評価を得る。2作目の『翼のない天使』(1998年:原題『Wide Awake』)は製作費をまったく回収できず惨敗するも、先述の『シックス・センス』が世界的な大ヒット。キャラクター映画全盛となる以前、SNSもなく宣伝手法も現在とは異なっていた時代に、新人監督として『シックス・センス』を思い通りに撮れたのはブルース・ウィリスの庇護もあったのだと、のちのインタビューで感謝を述べている。
アカデミー賞で作品賞や監督賞、脚本賞にノミネートされたが、良くも悪くもシャマランの“どんでん返し監督”というイメージを決定づけることとなった『シックス・センス』。そこから、のちにシリーズ化されることになる『アンブレイカブル』(2000年)や、アルミホイル帽子を被って◯◯◯にバットをフルスイングする『サイン』(2002年)など、ヒット作を連発。しかし、2004年の『ヴィレッジ』は世界的に興行的な成功は得たものの、あまりに衝撃的な演出のせいか(?)賛否の的となった。
世代で変わる? シャマランの評価と作品イメージ
『ヴィレッジ』は映画だけでなく様々な後発作品の“元ネタ”となっていて、お話としてはシンプルこの上ないのだが、当時としては斬新すぎたのかもしれない。しかし、公開時にまだ幼かった観客はその<衝撃>をピュアに受け止めており、たとえばZ世代の人気俳優アレックス・ウルフは『ヴィレッジ』をベスト映画に挙げるほど。また、『ラストナイト・イン・ソーホー』のエドガー・ライト監督もシャマランへの敬愛を隠さない。
そんなシャマラン映画をテレビで一気観できるのが、CS映画専門チャンネル ムービープラスの「ネタバレ厳禁!M・ナイト・シャマラン監督特集」。『ヴィレッジ』を筆頭に、先述のウルフが出演した近作『オールド』(2021年)や、再評価の機運を高めた『ヴィジット』(2015年)、公開時に製作費は回収できなかったが根強いファンが多く、いまだ考察が絶えない怪作『レディ・イン・ザ・ウォーター』(2006年)をドドッと放送する。
まだまだ残暑が厳しい初秋、自宅で涼しく「シャマラン(ハーフ)マラソン」と決め込もうではないか。