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多発する児童失踪
日本国内において、巨額の身代金が要求された「誘拐・人質事件」が最後に発生したのはいつ頃だろうか。私たちは過去の事件の多くをいつの間にか忘れてしまうが、当然ながら被害者の家族や遺族にとっては事件が“無事に”解決されない限り、心に一生消えることのない傷を抱えることになる。
金銭目的の誘拐事件は多くないとしても、児童誘拐/失踪事件は多発している。警察庁の統計によると年間8万人ほど届け出される行方不明者のうち、9歳に満たない児童の捜索届は年間で1000件以上も出されていて、10歳代になると1万人強となる(※2021年調査)。
そうした行方不明児童の大半は無事に発見されているそうだが、私たちが報道で目にするのは長期間にわたり発見されない事例であることが多い。もちろん最悪の事態が懸念されたり、事件化してしまった場合には広範囲にわたる捜索対象となる。
デジタル化に伴い多様化する“人質”事件
近年では“実態のないもの”を人質に取った身代金犯罪も多く発生している。<ランサムウェア>と呼ばれる身代金要求型のウイルス犯罪がその代表例で、つい最近も日本の某大手企業がターゲットとなり、長期間にわたって自社サイトの閉鎖に追い込まれた。ネット文化に疎い層にとっては誘拐事件と比して実感が湧かないかもしれないが、人命にかかわらないとは言い切れない狡猾な犯罪である。
なお外務省によると、アメリカでは2021年における行方不明者の登録件数は52万件超とのことで、そのうち1万件超が誘拐事件などの非自発的な理由によるものだという。そんなアメリカでは古くから誘拐をテーマにした映画が作られていて、1956年の名作『誘拐』(原題『Ransom!』)をリメイクしたのがメル・ギブソン主演作『身代金』(1996年)だ。
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