「ドハティ、そこまで再現しなくていいよ! これ僕たちの観てた怪獣映画じゃん!! (笑)」
※この記事は『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の内容に触れています。閲覧には十分ご注意下さい。
Dr.白神:本日司会を務めます、Dr.白神です。よろしくお願いします!
タカハシヒョウリ:よろしくお願いします、タカハシヒョウリです。今朝、3回目を吹替で観てきました。
大内ライダー:大内ライダーです。僕も計3回観ました。
白神:今回は、絶賛公開中の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に込められた数々の“オマージュ”について、生粋のゴジラファン・ミュージシャンであるタカハシさん大内さんにネタバレありで語ってもらいます!
タカハシ&大内:よろしくお願いします!
白神:まずは自己紹介の代わりに、好きなゴジラ映画と怪獣などを挙げて頂きましょうか。
タカハシ:僕は、怪獣としてガイガンがすごく好きなんです。今回『KOM』のコンセプトアートの中にガイガンっぽい怪獣がいたり、ドハティ監督も「ガイガンが好き」と発言していたり。
白神:ドハティはガイガンについて結構、言及しますよね(笑)。
タカハシ:ガイガンは、アメリカで人気あるらしいんだよね。オルガもアメリカでの人気が高いとか。だから、ラストの“アレ”がガイガンに繋がったりして、次回作で出てきてくれないかなーと願ってます。
大内:僕が好きなのは“VSシリーズ”で、好きな怪獣はキングギドラ、特にメカキングギドラです。
タカハシ:それこそ次回作で、出てくるんじゃない?(笑)
大内:残ってる部位が逆だから! 首だけ残ってても出てこれないと思うけどね(笑)。
白神:さっそくネタバレガンガンで始まりましたが(笑)。作品全体の感想はいかがでしたか?
大内:よく言われてるのが“人間ドラマ”の薄さみたいなところだと思うんですが、怪獣映画では、やっぱり“怪獣ドラマ”が見たいわけです。怪獣と同じフレームの中で起こるドラマ、つまり怪獣ドラマの足もとで起こる人間ドラマ、という意味では良かったと思います。
タカハシ:お前ら足もとにいすぎだろ! って思うよね(笑)。危なすぎるだろ! って。
大内:“足もとにいすぎ問題”はあると思いますけど(笑)、キングギドラという絶対悪がいて、人類とゴジラが一緒に戦い、ゴジラを応援するっていう構図としては良かったなと。
タカハシ:僕も怪獣パートは文句なしで、見たいものが見れたっていう感じです。ストーリーはダメな部分もあると思うんですけど、ただ思い返してみると“VSシリーズ”もドラマ部分はユルいんですよ。そこだけ取り出して面白いっていうんじゃなくて、怪獣ドラマと合わさって子ども心に良い感じだったんで。だから、「ドハティ、そこまで再現しなくていいよ!」っていう(笑)。「早く怪獣を出せよ!」って思わせるところまで、「僕たちの観てた怪獣映画じゃん、コレ!」って感じでした。
白神:それは大いにわかります(笑)。
ゴジラ「VSシリーズ」から平成『ガメラ』シリーズ、さらに『ストレンジャー・シングス』ネタも!?
白神:ドハティ監督はかなり過去のシリーズも観込んでいると思うんですが、全体を通して作風へのオマージュや、過去作からの影響はどう感じましたか?
タカハシ:全体としては、前の戦い(『GODZILLA ゴジラ』[2014年])のトラウマのシーンがあって、そこで家族を失った主人公たちの物語、という意味では『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』(1999年)ですよね。ゴジラが地球のバランスを保つ守護神で……っていうのも平成ガメラだし。
大内:超古代文明の怪獣というのも、完全に平成ガメラだね。VSゴジラシリーズと平成ガメラのハイブリッド的な。
タカハシ:大きな意味では平成ガメラシリーズが根底にあるな、っていうのはありましたね。ドハティ監督がいつ平成ガメラを見たのかわからないけど、やっぱり僕らの世代的には平成ガメラの衝撃って大きかったよね。
白神:前作のギャレゴジ(『GODZILLA ゴジラ』[2014年] ギャレス・エドワーズ監督)は、かなり『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)でしたよね。今作の、一度眠りについたゴジラを人間の力で呼び覚まして宇宙からの外来種を倒すっていう流れは、『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年)ですよね。
タカハシ:そうだね、(ガメラの)2と3を合わせたみたいな。
白神:それにあのギドラの名前が意味する「ひとつにして無数」も、レギオンの「我々は大勢であるがゆえに」みたいですよね。あれは言わせたかった感がすごいです(笑)。
タカハシ:でも、VSゴジラシリーズと平成ガメラシリーズのオマージュをやるなら、マディソンは超能力少女になるはずだよね。それが、実はそうじゃなくって、“特別な力を持たない女の子”っていうのは、ちょっとひねってるよね。
白神:予告とかだと、サイキック的な“匂わせ”をやっていました。
タカハシ:予告では、VSシリーズの三枝未希のようにマディソンがゴジラと感応しあって味方になったように見えるんだけど、実は違う。『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016年~)の超能力少女・イレブン役でブレイクしたミリー・ボビー・ブラウンを起用してることも含めて、ドハティ監督は確信犯的にミスリードさせようとしてる。
大内:アメリカ本国では、あの「お母さんこそ怪物よ」っていうセリフで爆笑が起こるって話だよね。ヴェラ・ファーミガとカイル・チャンドラーは怪物性を抱えた人物をよく演じてるから、アメリカ人的にはあそこが面白いらしい。
タカハシ:『ストレンジャー・シングス』の中でミリー・ボビー・ブラウンが「お前は怪物だ」って言われる重要なセリフがあるんだけど、今度はあの子がそれを母親に言ってるっていうのは、わざとやってるよね。『ストレンジャー~』の先生役の役者さん(ランディ・ヘブンス)も出てくるし。
白神:『シン・ゴジラ』(2016年)が日本人のツボを突く演出だったのと対照的に、アメリカ人のツボを突く作風になっているわけですね。
音楽もオマージュ盛りだくさん! ラドンやモスラの描き方に注目
白神:シーンごとのオマージュはどうですか?「ここはよくぞやってくれた!」っていうのは。
タカハシ:そうだね、やっぱりラドンのソニックブームで街が吹き飛ぶところかな。もともと『空の大怪獣ラドン』(1956年)のソニックブームのシーンって、黄金期の昭和特撮で最高と言ってもいいくらいの名シーンで、あれを最新のCG技術でやったらどうなるのかっていうのが見れたのは良かったですね。あと、あのラドンのシーンでかかる音楽は伊福部昭さんの手がけたものではないんだけど、すごく伊福部さんの「ラドンのテーマ」っぽくなってるよね?
白神:あれは『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)に出てくる「二代目ラドンのテーマ」のフレーズを分解して組み替えていますね。確実にオマージュしていると思います。
タカハシ:ギドラの音楽もそうだけど、新曲もちゃんと“東宝っぽさ”があるサントラになってますね。
大内:ゴジラとキングギドラが光線を撃つとき、CGなのにリレー発光するっていうのは、ドハティ監督は趣味いいなーって。エネルギーが上がってくるのが目視できる。
タカハシ:ゴジラとギドラが戦う南極のシーンは、『ゴジラVSキングギドラ』(1991年)の北海道での戦いを彷彿とさせる構図が出てきて良いよね。あそこで光線を喰らったゴジラが明らかに通常とは違う、初代ゴジラの声で鳴きますよね。
白神:スタジアムに最初に現れる時の声も、日本の旧作の声を使ってるんじゃないかと思います。
タカハシ:弱ったゴジラにモスラが力を与えるっていうのは、『ゴジラVSメカゴジラ』(1993年)でファイヤーラドンがゴジラに力を与えるシーンと、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001年)でモスラがギドラに力を与えて千年竜王にパワーアップするシーンですよね。それが敵味方入れ替わってるっていう。ここまでモスラがゴジラの味方で“良い仲”っていうパターンは日本では無いから、そういう意味でも『KOM』は特徴的だね。
文・構成:タカハシヒョウリ
<小ネタ解説を大量投下! 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』と『遊星からの物体X』の関係は? 特撮を愛しすぎる科楽特奏隊が爆トーク!!>
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は2019年5月31日(金)より世界同時公開
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
ハリウッド版「ゴジラ」最新作!前作『GODZILLA ゴジラ』から5年後の世界が舞台。モスラ、ラドン、キングギドラらの神話時代の怪獣たちが復活し、世界は破滅へと歩みを進める。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
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