胸糞セクハラ・スリラー映画の新たな傑作『ロイヤルホテル』は何が“怖い”のか?女性旅行者の心身を蝕む盛り場の狂乱と腐敗の根源
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淡々と冷ややかな最恐社会派サスペンス劇『アシスタント』(2019年)で世界のド肝を抜いたキティ・グリーン監督が、主演のジュリア・ガーナーと再び組んだスリラー映画『ロイヤルホテル』が7月26日(金)より全国公開となる。
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『ロイヤルホテル』© 2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW
エンタメ業界における様々な搾取構造を静かに、しかし力強く突きつけたグリーン監督が新たな題材に選んだのは、根深く蔓延る「ハラスメント」の数々。2人の女性バックパッカーがオーストラリアの炭鉱町にあるパブで働く姿を追ったドキュメンタリー『Hotel Coolgardie』(2016年:原題)からインスパイアを得たという本作は、『アシスタント』の結末の先を描いているようにも見える。
女性バックパッカーが味わう“地獄”
ハンナ(ジュリア・ガーナー)と親友のリブ(ジェシカ・ヘンウィック)は旅行で訪れたオーストラリアでお金に困り、荒れ果てた田舎にある古いパブ<ロイヤルホテル>に滞在し、バーテンダーとしてワーキング・ホリデーをすることに。
単なる接客バイトかと思いきや、彼女たちを待ち受けていたのは、飲んだくれの店長や荒々しい客たちが起こすパワハラやセクハラ、女性差別の連続だった。楽観的なリブは次第に店に溶け込んでいくが、真面目なハンナは孤立し精神的に追い込まれ、次第に2人の友情も崩壊していく……。
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『ロイヤルホテル』© 2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW
同じくオーストラリアの田舎町を舞台にしたカルト映画『荒野の千鳥足』(1971年)も引き合いに出される本作。場末のパブにおける狂乱が主人公にどんな影響を与えるのか、立場による違いが明確に出ていて興味深いので、観比べてみてもいいだろう。
ジュリア・ガーナー&ジェシカ・ヘンウィックの熱演に注目!
ハンナ役のジュリア・ガーナーは、Netflixシリーズ『オザークへようこそ』(2017~2022年)で「彼女は何者!?」と注目を集め、『アシスタント』で世界中の話題をかっさらった。黙ってカメラを見つめるだけで間をもたせることができるであろう抜群の存在感が、抑圧された女性という役柄によって異様なまでの説得力を生み出していた。
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『ロイヤルホテル』© 2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW
リブを演じるジェシカ・ヘンウィックはNetflixの『Marvel アイアン・フィスト』(2017~2018年)などで激しいアクションもこなし、アジア系スターの仲間入りを果たす。その後『マトリックス レザレクションズ』(2021年)や『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』(2022年)などの大作に立て続けに出演。本作ではガーナーを食うほどの演技を見せつけている。
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『ロイヤルホテル』© 2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW
パブのオーナーを演じるのはあのヒューゴ・ウィーヴィングで、初っ端からさすがの禍々しさを2人にぶつけてくる。『マトリックス』『キャプテン・アメリカ』以降は出演作選びにシビアになったという噂もあったが、良質な中規模作品で彼の演技を見られるようになったのは率直に嬉しい。
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『ロイヤルホテル』© 2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW