『K.G.F:Chapter1/2』(2018年/2022年)のプラシャーント・ニール監督と、『バーフバリ』2部作(2015年/2017年)の主演プラバースが初めてタッグを組んだテルグ語映画『SALAAR/サラール』をご紹介します。
プラバースについては、過去に幾つもの記事が上がっていますので、ここではプラシャーント・ニール監督について書こうと思います。
Rebel star #Prabhas wishes #PrashanthNeel a very happy birthday with this unseen working still from the sets of #Salaar 🥁🔥🔥
We can’t wait for the epic explosions of #Salaar2 to light up theaters soon! #HBDPrashanthNeel pic.twitter.com/OYaVHqIShZ
— Prabhas FC (@PrabhasRaju) June 4, 2024
自らのデビュー作を『K.G.F』の巨大スケールで再構成
本作は、デビュー第2、3作目にあたる『K.G.F:Chapter1/2』の大成功でインド全体に名をとどろかせることになった同監督による、注目の第4作目。実は監督自身が本作を、デビュー作である『Ugramm(憤怒)』(2014年/日本未公開)のパワーアップした拡大的なセルフリメイクであると言っています。
多くの批評家や映画愛好家から絶賛され、カンナダ語ニューウェーブの代表作のひとつとなった『Ugramm』ですが、監督によれば、公開後15日で海賊版が出回り、本来の興行的ポテンシャルが生かせなかったというのです。もちろん『Ugramm』と『SALAAR/サラール』はそっくり同じではありませんが、『K.G.F』も含めた4作には「プラシャーント節」とでも言いたくなるような共通する世界観があります。
全てのプラシャーント作品に通底するもの
それは、「①:現実とパラレルに存在する治外法権状態の架空の悪の領域」、「②:善悪の軸のゆらぎの中での友情・忠誠・愛情」、「③:主人公の母の強い戒めまたは悲願」、「④:暗い曇天の下での煤煙・砂塵・鉄錆・どす黒い血の美学」、「⑤:噴出する巨大で暴力的な怒り」、のようにまとめられるでしょうか。
特に②については、(本作の舞台となる)犯罪者の集合体である王国の中で「遵法」や「正統性」を指向する倒錯が観る者を刺激します。また、⑤の怒りについては、まさに「ウグラム(Ugramm)」という言葉が監督を突き動かしているように思えます。
それは単なる怒りではなく、ヒンドゥー教神話のナラシンハ神が不信心者に示した神の怒りです。以下にその神話を紹介しましょう。
『SALAAR/サラール』
1985年、先祖代々盗賊を生業にする部族によって建てられた国カンサール。王ラージャ・マンナルの第二夫人の息子ヴァラダは、第一夫人の息子ルドラに名誉と権力の象徴である鼻輪を奪われてしまう。ヴァラダの親友デーヴァは、ヴァラダのために闘技場の試合に挑み、みごと鼻輪を取り戻す。
しかし国内で部族間の争いが発生し、デーヴァの母親が窮地に陥る。駆けつけたヴァラダは自らに与えられた領地と引き換えにデーヴァの母親を救い、デーヴァは母親とカンサールを去って身を隠すことに。デーヴァは別れ際に、ヴァラダに「名前を呼べば、必ず駆けつける」と誓いを立てる。
25年後、ラージャ・マンナルがカンサールを留守にしたことから、国全体を揺るがす抗争が勃発。かつて領地を投げ出したことで権力の座から遠ざけられていたヴァラダは、ついに親友デーヴァを迎えにいき、王座をめぐる争いに身を投じる決意をする。しかしデーヴァのある秘密が、ふたりの友情を引き裂き、カンサールにさらなる激震を引き起こす……。
監督・脚本:プラシャーント・ニール
出演:プラバース、プリトヴィラージ・スクマーラン、シュルティ・ハーサン、ジャガパティ・バーブ、イーシュワリ・ラーオ、シュリヤー・レッディ
制作年: | 2023 |
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2024年7月5日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー