これが最後の「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」
2021年9月6日に惜しくも世を去ったフランスの国民的英雄にして映画界のレジェンド、ジャン=ポール・ベルモンド。2020年10月、2021年5月、そして2022年9月の3回にわたってベルモンドの主演作20本を厳選して上映し、大好評を博してきた企画上映イベント<ジャン=ポール・ベルモンド傑作選>が、その集大成ともいうべき最高のラインナップを揃え、その名も「GRAND FINALE」と題して感動のフィナーレを迎える。
この「最後のベルモンド傑作選」のハイライトは、多くのファンから上映を熱望されるも権利取得に困難を極め、前3回では上映できなかったベルモンドのフィルモグラフィの中でも重要な3つの傑作だ。長年におよんだ交渉の末、ついにその封印が解かれ、これまでビデオやテレビ、配信等でも観ることが出来なかった幻の3大傑作のデジタルリマスター版での上映が実現する。
51年ぶりスクリーン上映『おかしなおかしな大冒険』ほか激レア作品も
まずは、『リオの男』『カトマンズの男』の名コンビ、フィリップ・ド・ブロカ監督、ジャクリーン・ビセット共演の痛快冒険大活劇で、1973年の初公開時以来、VHSもDVD化もされておらず51年ぶりのスクリーン上映となる『おかしなおかしな大冒険』。
そして、『男と女』『愛と哀しみのボレロ』の巨匠クロード・ルルーシュ監督がベルモンド自身を思わせる豪快な男の人生を高らかに謳いあげ、ベルモンドに初のセザール賞主演男優賞をもたらした記念すべき1本、『ライオンと呼ばれた男』(1988年)。
さらに、同じくクロード・ルルーシュ監督がヴィクトル・ユゴーの同名原作を激動の20世紀を舞台に大胆にアレンジし、“「レ・ミゼラブル」の映像化史上最高傑作”との評判も高い感動の大傑作『レ・ミゼラブル』(1995年)。いずれもジャン=ポール・ベルモンドの代表作にして、映画史に燦然と輝く重要な作品ばかりだ。
なお今回は、これまで上映してきた20本作品の中から、“日本最終上映”となる『恐怖に襲われた街』と『危険を買う男』を含む、人気作6本を厳選したアンコール上映も実施。まさに最後の傑作選、“グランドフィナーレ”の名にふさわしいベルモンドの帰還を劇場で出迎えよう。
ジャン=ポール・ベルモンド(JEAN-PAUL BELMONDO)
1933年4月9日、パリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌに生まれる。父は著名な彫刻家ポール・ベルモンド、母も画家だった。幼い頃は病弱だったが、その後サッカーに熱中、さらにボクサーになる夢を持つスポーツマンとなった。やがて俳優を志し、コンセルヴァトワールに入学、1956年に同校を優秀な成績で卒業する頃にはすでに有望な若手舞台俳優として注目を集めていた。
1957年の『歩いて馬で自動車で』で長編映画デビュー後、クロード・シャブロル監督の『二重の鍵』(1959年)で注目され、さらに同年ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』(1960年)で一気にブレイクを果たし、母国での圧倒的人気とともに、フランス・ヌーヴェル・ヴァーグの代表的スターとして国際的な知名度を得た。多くの名匠、巨匠の作品に出演する一方、売り出し中のフィリップ・ド・ブロカ監督と組んだ『大盗賊』(1961年)が大ヒットを記録、コメディ・タッチのエンタテインメント作品で新たな魅力が開花した。
ド・ブロカ監督とはさらに冒険アクション大活劇『リオの男』(1964年) 、『カトマンズの男』(1965年)で組み、危険なアクションをスタントマンなしで自ら演じたことも話題となり世界的な大ヒットとなって“アクション・スター”ベルモンドのイメージを強烈に印象付けることになった。
1965年の『気狂いピエロ』を最後にゴダール監督とは袂を分かち、ベルモンドはアクション、コメディ、ラブ・ストーリーと、エンタテインメントの王道をいく作品を中心に出演して次々と大ヒットを飛ばし、フランス映画の顔として大活躍することになった。
1970年には当時フランス映画界で人気を二分していたアラン・ドロン製作、主演の『ボルサリーノ』でドロンと共演、大きな話題となって大ヒットした。72年『ジャン=ポール・ベルモンドの交換結婚』からは自ら製作会社セリト・フィルムを設立して製作業にも進出、74年にはフランス映画界で出演料が最も高い俳優となった。75年の『恐怖に襲われた街』から、80年代中盤まではハードなアクションを見せ場にした主演作を連打し、年間興行成績の上位に君臨し続けた。
1988年、アクション映画卒業後のクロード・ルルーシュ監督作『ライオンと呼ばれた男』(88)では初めてセザール賞主演男優賞を受賞。さらに2011年、カンヌ国際映画祭で名誉ゴールデン・パルム賞、2016年、ヴァネチア国際映画祭で栄誉金獅子賞など、数多くの生涯功労賞を受賞している。
2度の結婚で、元F1レース・ドライバーのポール・アレクサンドル・ベルモンドなど4人の子どもがあり、孫の一人、アナベル・ベルモンドはモデル、女優として活躍中。また、ウルスラ・アンドレス、ラウラ・アントネッリといった女優とのロマンスも有名である。
香港のジャッキー・チェンやチョウ・ユンファ、日本のコミック「ルパン三世」、「コブラ」、フランス=ベルギーのグラフィック・ノベル「ブルーベリー」など、ベルモンドのファンを公にしている俳優、映画監督、作家、漫画家は世界中に数多く、ベルモンド映画の影響下にある作品も枚挙にいとまがない。
2021年9月6日、パリの自宅で死去。享年88歳。9月10日にはアンヴァリッド廃兵院でフランス政府主催による追悼式が営まれた。