あの高良健吾主演作を韓国で再映画化!SABU監督インタビュー
美しく、そして凛々しい。だが時折、醜く歪み狂気に満ちたもの。“恋愛”は面倒な感情だ。その元凶は千差万別だ。病、地位の違い、互いの距離、不倫、暴力……映画は様々な“面倒ごと”を描いてきた。高良健吾主演の同名日本映画を韓国で最映画化した『アンダー・ユア・ベッド』は、そんな面倒ごとの詰め合わせのような作品になっている。
同級生に名前すら覚えてもらえない根暗な学生時代を過ごした青年ジフン。彼は唯一自分の名前を呼んでくれた女性、イェウンのことを忘れられない。ジフンは数年後、イェウンと偶然再会する。学生時代の想いがフラッシュバックし、強烈な引力に引かれるかのように、彼女の家を突き止めると、監視カメラと盗聴器で24時間監視を始める。すでに結婚していたイェウンだったが、じつは彼女は夫のヒョンオから激烈な暴力を受けていた――。
DV夫にストーカー男、どっちもどっちだと思うが、『アンダー・ユア・ベッド』は双方にそれなりの事情があり、道を踏み外し、それ故の苦悩が描かれている。プロットだけでは「気持ち悪い」話だし、スクリーンに映し出される性描写や暴力は嫌悪感を抱かせる。しかし、本作は妙に美しいのだ。
この妙な美しさの元を暴くべく、韓国映画界に乗り込んだSABU監督にお話を伺った。
「性描写は美しく、暴力描写は突き抜けて」
―『アンダー・ユア・ベッド』を韓国映画として映画化した経緯は?
以前『Miss ZOMBIE』(2013年)を国際配給した時に、韓国の配給/制作会社と繋がりができていたんです。ずっとやり取りをしていて、「いつか韓国映画を一緒に撮りたいね」なんて話をしていて。いくつか脚本はもらったんですが、なかなか実現しなくてね。それで今回、「『アンダー・ユア・ベッド』を撮ってもらえませんか?」となって実現したんです。
―直々にオファーがあったんですね
撮った後に聞いた話なんだけど、『アンダー・ユア・ベッド』は激しい性描写やDVシーンがあるでしょう? 韓国の監督に何人か依頼したらしいんだけど、全部断られちゃったみたいで(笑)。そこで僕に依頼が来たというわけです。
―今おっしゃったように性描写やDVシーンが強烈ですが、作品全体として非常にバランスのとれた作品であると感じました。このバランス感覚はどのように構築していったのでしょうか?
まず性描写は美しくなければならないことを大前提にしていました。グロテスクな性描写にはしたくなかったんです。イ・ユヌは俳優としては新人ですし、できるだけ綺麗に撮ってあげたいと思いました。暴力描写については、性描写とあわせて年齢制限がつくだろうと思い、性描写と対比させるように突き抜けて撮りましたね。併せて画角を4:3にすることで、両者ともアート的な感覚を持たせるようにしました。
―4:3の画角が生み出すアートな感覚とは?
“余白”を生かせると考えました。今回は頂いたお仕事でしたし、好き放題やってみようと(笑)。スタッフに提案したら皆、この画角が好きで……じゃあ、4:3でいこうと。さらにモノクロにしようとも思ったのですが、最終的にはカラーになりました。韓国ならではの風景にもマッチしているかなと。グチャグチャになった電線なんて韓国にしかない風景ですし、絶対撮りたいと思っていました。