「とてもタフな物語。子役の2人がいなかったらやり遂げることはできなかった」
ジュリア・ロバーツといえば、『プリティ・ウーマン』(1990年)の大ヒットをきっかけにトップ女優として90年代を駆け抜けた、ハリウッドを代表するビッグスターである。『エリン・ブロコビッチ』(2000年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞した彼女は翌年、ブラッド・ピットと共演した『ザ・メキシカン』(2001年)のカメラマンと結婚。3人の子どもを出産してからは育児を優先しているものの、『クローサー』(2004年)、『食べて、祈って、恋をして』(2010年)、『ワンダー 君は太陽』(2017年)などの良作で存在感を発揮している。
そんなオスカー女優の最新作が、2019年5月24日(金)公開の『ベン・イズ・バック』だ。ドラッグ依存症を抱えた息子を全力で守ろうとする母親役で、キャリア最高とも言われる演技を披露したジュリア・ロバーツに、本作の魅力を聞いた。
―本作に出演を決めた理由は?
素晴らしい機会だと思ったの。見事に描かれたキャラクターで、正しいと同時に常に間違っている。息子のドラッグ依存に対処するうえで、実は彼女が最大の障害になっているの。そんな矛盾に満ちた母親を演じるのは、とても貴重な体験だと思って。撮影期間が短くて大変だったけど、限られた時間のなかで大切なことをすべてやり遂げようという気持ちで臨んだわ。
―とてもリアルな演技でしたが、同様の問題を抱えている母親に取材をしたのですか?
いいえ。つらい目に遭っている人に根掘り葉掘り質問して、それを自分の仕事に役立てようとするのは、とても身勝手に思えたから。幸か不幸か、いまはオンラインであらゆる情報にアクセスできる。だから、必要なものはすべてネットで入手できた。依存症の子どもを持つ母親のスレッドを読めば、それぞれの事情や苦悩を知ることができたわ。
―それにしても、圧巻の演技でした。
ありがとう。難しいとわかっていたからこそ、やりたいと思ったの。すでに脚本に必要なものはすべて揃っていたしね。ただ、肉体的にここまできついものになるとは想像しなかった。真夜中、氷点下のなかでルーカス(・ヘッジス)と向き合う場面では、このまま死んじゃうかも、なんて思いながら(笑)。
―母親を演じるうえで、子役の俳優とはどんな話し合いをしたんですか?
撮影が始まる前に、ルーカスとキャスリン(・ニュートン)を自宅に招待したの。お互いのことを理解しあって、リラックスして仕事ができるように。撮影が始まってからでは、そんな贅沢な時間は作れないから。わたしは2人のことを心から尊敬しているし、愛している。彼らが子役を演じてくれなければ、こんなタフなストーリーをやり遂げることはできなかったと思うわ。
「世の中のポジティブな側面を見て、子どもたちが無傷で成長してくれることを祈るだけ」
―ピーター・ヘッジス監督とのお仕事はいかがでしたか?
ピーターはとてもエモーショナルで優しい心の持ち主なの。わたしたちが演技をしているとき、モニターを見つめながら涙を流してばかりいた。役者としては、ピーターが泣くのを見ると、やりがいを感じることができたわ。
―あなたも実生活で母親ですが、お子さんがドラッグ依存症になることに対する不安はありませんか?
考えないようにしている。この世界にある、ありとあらゆる悪夢と同じように。いったん心配しはじめたら、家中に鍵をかけて子どもを外に出さなくなってしまう。だから、世の中にある明るい話題やポジティブな側面を見るようにしている。あとは、子どもたちが無傷のまま成長してくれることを祈るだけで。
―本作で、まさにキャリア最高の演技を披露していると思いますが、これまでの人生のハイライトを3つ挙げるとしたら?
そうねえ。生まれたこと、結婚したこと、子どもを産んだこと、かな。
―そうですか……。
ちょっとがっかりしたみたいね(笑)。でも、わたしにとってはこの3つがハイライトね。
―結婚は大きな出来事だったんですね。
ついに完璧な相手を見つけることができたから。この広く大きな世界でそんなことはなかなかないもの。彼と出会えたことで、自分が何者か分かったし、どんどん向上することができるようになったわ。
―では、キャリアでのハイライトは?
それは簡単。ゲイリー・マーシャル監督(『プリティ・ウーマン』)、スティーヴン・ソダーバーグ監督(『エリン・ブロコビッチ』)、そしてマイク・ニコルズ監督(『クローサー』)と仕事ができたことね。
文:小西未来
『ベン・イズ・バック』は2019年5月24日より公開中
『ベン・イズ・バック』
クリスマスイブの朝、薬物依存症の治療施設で暮らす19歳のベンが突然帰宅する。ある晩、一家が帰宅すると、家のなかが荒らされ、愛犬が消えていた。昔の仲間の仕業だと考えたベンは、過去を清算するために一人で飛び出していく……。
薬物依存のベンが一人で清算しようとしている過去。その恐ろしい事実を知った母の決してあきらめない愛と家族の絆を描く。
制作年: | 2018 |
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監督: | |
出演: |