ゴジラ70周年の記念すべきタイミングで絶賛公開中の『ゴジラxコング 新たなる帝国』を後押しするべく、本作の見所や元ネタを徹底解説。後編では、ついに出演が解禁となった“あの怪獣”や意外すぎるインスパイア元などについて解説する。
▶記事前編はコチラ👉️ 登場怪獣ほぼフル紹介!『ゴジラxコング 新たなる帝国』で描かれる史上初(!?)健康トラブルや山崎貴監督リスペクトほかトリビア徹底解説【前編】
※物語の内容に一部触れています。
子どもエイプ怪獣<スーコ>とベビーヨーダの関係
アダム・ウィンガード監督流“昭和ゴジラ映画”を目指したという、全編見所だらけと書いても過言ではない本作の中でもとくに大きな見所といえば、これまでは独りぼっちだと思われていたコングと同じ種族らしき、エイプ怪獣の存在が明らかになることだ。
虫歯が完治して地下空洞世界に戻ったコングの前に、なんと子どものエイプ怪獣ベイビーコングが現れる。この怪獣、劇中では言及されないが、玩具の商品名等では<スーコ>という名になっている。この新怪獣もウィンガード監督が、『マンダロリアン』(2019年~)に登場するベビーヨーダ(グローグー)を観て、「よし! モンスター・ヴァースにも可愛い系のキャラを登場させよう!」とひらめいて誕生したそうだ。
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— 映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』公式 (@GodzillaMovieJP) April 28, 2024
スーコ
コングが地下空洞で
偶然に出会った猿のようなタイタン。#ゴジラxコング 大ヒット上映中#GodzillaXKong#GGW #ゴールデンゴジラウィーク pic.twitter.com/oHbV5Ipvo5
そう書くと、実に浅い動機で誕生したんだな……と思いそうだが、そこは独特な感性のオーナーであるウィンガード監督。スーコのキャラクターを作る際、ベビーヨーダのような愛くるしさと同時に、実録犯罪映画『シティ・オブ・ゴッド』(2002年)や「はだしのゲン」に登場する少年ギャングのようなアグレッシブな悪ガキ風味もトッピングした。
そういう子なのでウィンガード監督は、コングと親子のような関係になる際に父と息子の力関係について議論する様子は、アニメ『ザ・シンプソンズ』(1989年~)の主人公ホーマー・シンプソンと息子バートの、常軌を逸した親子関係を参考に描いたという。
Cheers to an explosive #FourthOfJuly for the whole family. pic.twitter.com/CQJZC1NlL9
— The Simpsons (@TheSimpsons) July 4, 2023
新たな宿敵<スカーキング>と“エイプ怪獣”エトセトラ
本作に登場するエイプ怪獣はコングとスーコだけではない。本作のメイン・ヴィランとなる<スカーキング>も、コングと同じ種族の怪獣だ。しかも彼は、コングや人類にとって未知のゾーンである地下空洞世界の火山地帯に棲息していた何百頭ものエイプ怪獣を支配して軍隊を組織し、何千年にもわたって地球制服のチャンスを虎視眈々と狙っていた、というモンスター・ヴァース映画史上最もスケールがデカい上昇志向のオーナーである。
スカーキングは本当にエキサイティングな悪役だよ。コングの性格は、人間が持つ純粋さや善良な部分を表しているけれど、スカーキングの性格は、人間が持つ邪悪な部分をスケールアップさせた“アンチ・コング”というべき存在なんだ。しかも、コングよりも俊敏なんだよ。
そうウィンガード監督が語るように、劇中のスカーキングは狡猾でダークすぎる野心と権力志向を持つ独裁エイプなうえに、とにかく態度が悪い、という常人なら1ミリも共感できない怪獣だ。
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— 映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』公式 (@GodzillaMovieJP) April 27, 2024
スカーキング
地下空洞に築いた王国で、
タイタンたちを支配している。#ゴジラxコング 大ヒット上映中#GodzillaXKong#GGW #ゴールデンゴジラウィーク pic.twitter.com/rqDAqm3KFd
そんなキャラクターを具現化するため、本作の怪獣デザイナーであるジャレッド・クリチェフスキーは、オランウータンとテナガザルをベースにスカーキングをデザイン。オランウータンを醜悪にしたような顔に毛髪が寂しい頭部、ひょろひょろなスリム体系にテナガザルのような長い腕、という不穏なムード漂うボディのオーナーにしただけでなく、全身に赤い染料でウォーペイントをほどこして不気味なヴィラン怪獣に仕上げた。つまり、『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年)、『ゴジラvsコング』(2021年)で描かれた“赤い手形”は、スカーキングによるものだと示唆されている。
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「友愛」、「平和」、「協調性」、「コンプライアンス」という言葉とは無縁で、画期的にずる賢くて態度の悪さが(現実では勘弁だけど、映画の悪役的には)サイコーなスカーキングは戦闘の際、まずは自分は参加せず、彼の兵士となったエイプ怪獣たちに仕掛けさせる。スカーキングに忠誠を誓ったエイプ怪獣たちは、ボスと同じようにボディに赤いウォーペイントをほどこされ、スカーキングの私兵となる(映画のノベライズでは“レッド・ストライプス”と呼ばれている)。
他に、スカーキングの奴隷となったエイプ怪獣たちも登場。さらにスカーキングは何頭もの女性エイプ怪獣たちに自分の子どもを出産させて、我が子として愛でるのではなく配下にする、という『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)、『マッドマックス:フュリオサ』(2024年)の悪役イモータン・ジョーも共感してくれそうで共感してくれない、権力志向に憑りつかれたヴィランだ。映画のノベライズによると、スーコもそんな境遇によって誕生した子どもで……。
ちなみにコングの同族怪獣は、『キングコング:髑髏島の巨神』公開後にリリースされた、映画の“その後”を描いたコミック「Skull Island: The Birth of Kong」にも登場する。同コミックの回想シーンで、幼いコングの両親と仲間のエイプ怪獣たちが、『キングコング:髑髏島の巨神』のヴィラン怪獣<スカル・クローラー>の大群から幼いコングを守るために命を落とす様子が描かれているのだが、エイプ怪獣たちは皆、コングと同じゴリラ系怪獣だった。
しかし、本作は違う。ゴリラ系だけでなく、オランウータン系、チンパンジー系などが様々な種類のエイプ怪獣が登場する巨大な『猿の惑星』状態! ということなので劇中、コングVSスカーキングだけでなく、コングVSレッド・ストライプスも披露されるという、エイプ怪獣ファンならばこのシーンだけで白飯が何杯でもおかわりできるゴージャスな作品になっている。ぜひ「みんなちがって、みんないい」エイプ怪獣たちの魅力を堪能して欲しい!
また、スカーキングのダークな性格は1対1の戦闘にも表れている。コングを凌駕する俊敏さでトリッキーな攻撃を仕掛けてくるだけでなく、ハードコアな武器を使用。前作『ゴジラvsコング』でコングと戦った、全長130メートルの翼のある大蛇のような怪獣<ワーバット>の脊椎の骨で作られた鋭いムチだ。
◢◤ コング ◢◤
— 映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』公式 (@GodzillaMovieJP) April 7, 2024
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◢◤スカーキング◢◤
『#ゴジラxコング 新たなる帝国』
🎬4.26(金)公開#ゴジラ pic.twitter.com/Y2jWlheypv
対するコングは前作でゲットしたバトルアックスを使うのだが、これはウィンガード監督が大好きなバイオレンス映画『北国の帝王』(1973年)のリー・マーヴィンとアーネスト・ボーグナインによる、「斧 VS チェーン」の戦いからインスパイアされたものだ。
デカさ最大クラスの冷凍怪獣<シーモ>はデザインも難航
限度を超えた悪知恵のオーナーであるスカーキングは、戦闘では軍隊、ムチだけでなくさらなる秘密兵器を用意している。全長162メートルの四足歩行の怪獣<シーモ>を監禁して、戦闘の際には大量破壊兵器として使用するのだ。
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— 映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』公式 (@GodzillaMovieJP) April 29, 2024
シーモ
ゴジラやコングよりも巨大な
伝説の氷のタイタン。#ゴジラxコング 大ヒット上映中#GodzillaXKong#GGW #ゴールデンゴジラウィーク pic.twitter.com/0cs0ytnXoL
モンスター・ヴァースにおいて、ワーバットなどのヘビ系怪獣を除いて最も巨大な怪獣となるシーモは、口から凄まじい冷気を放出する冷凍怪獣。かつて地球が氷河期になったのはシーモの仕業、という最終兵器感満載な設定の怪獣デザインが決定するまで、ウィンガード監督と怪獣デザイナーのクリチェフスキーは試行錯誤を繰り返したという。
最初は「ゴジラの冷凍怪獣バージョン」というコンセプトでデザインを試みるが、納得のいく姿にならなかった。その後、異世界ものに登場するドラゴンのようなデザイン、『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年)の冷凍怪獣バルゴンを思わせるデザインを試すがすべてボツ……。最終的にクリチェフスキーは架空の怪獣ではなく、現実に存在する動物たちの要素を組み合わせてデザインした。
その結果、四足歩行するボディはコモドオオトカゲとホッキョクグマをベースに、頭部のフォルムはカメレオンをベースにし、背中からクリスタル状の突起物を生やしたシーモが誕生。モンスター・ヴァース作品に登場するオリジナル怪獣のデザインについて、ウィンガード監督は「モンスター・ヴァースに存在する怪獣にふさわしいデザインにするのは、ある程度シンプルな感じにする必要があるんだ」と語っている。
ちなみにシーモは女性怪獣である。この女性をコキ使っているスカーキングは、地球をいま一度、氷河期にして支配しようと目論む……。
コングにとってはスカーキングだけでも厄介なのに、彼はシーモも従えている。だからコングとゴジラはチームを組む必要があるんだ。