第2次大戦、ナチス支配下のポーランド、そしてドイツ。ユダヤ人としての素性を隠して生きている美青年フィリップが、復讐、愛、死、孤独、そして時代に翻弄されながら、もがき生きていく—。1961年にポーランドで発刊後、その内容の過激さから、すぐ発禁処分に。やがて、60年の時を経た2022年にようやくオリジナル版が出版。ポーランド人作家レオポルド・ティルマンド実体験に基づく自伝的小説「Filip」(※日本未刊行)をもとに描かれた映画『フィリップ』が、6月21日(金)より公開される。このたび、本予告映像と場面写真が解禁となった。
愛と復讐の狭間で生きる男に救いはあるのか
1941年、ワルシャワのゲットーで暮らすポーランド系ユダヤ人フィリップ(エリック・クルム・ジュニア)は、恋人サラとゲットーで開催された舞台でナチスによる銃撃に遭い、サラや家族、親戚を目の前で殺されてしまう。2年後、フィリップはフランクフルトにある高級ホテルのレストランでウェイターとして働いていた。自身をフランス人と偽り、戦場に夫を送り出し孤独にしているナチス将校の妻たちを次々と誘惑することでナチスへの復讐を果たしていたが、孤独と嘘で塗り固めた生活の中、やがて、プールサイドで知的な美しいドイツ人のリザ(カロリーネ・ハルティヒ)と出会い、愛し合うようになる。だが戦争は容赦なく二人の間を引き裂いていく…。
「これは復讐だ」容姿を武器に、次々とドイツ人女性を誘惑
本予告は、自らの容姿を武器に、次々とドイツ人女性を誘惑。復讐のためだけに生きていた孤独な青年ユダヤ人フィリップが、ドイツ人女性リザとの出会いによって、禁断の愛と復讐の狭間で葛藤していく様子を捉えたもの。
過去、家族と恋人をナチスに殺されたフィリップ。「これは復讐だ」—数年後、彼は、自らを“フランス人”と偽り、ナチスの支配するホテルで勤務、自らの端正な容姿を武器にドイツ人女性を無差別に誘惑、無慈悲に捨てることで<復讐を果たす>という日々を繰り返していた。そんな中、いつものようにプールサイドで次のターゲットを物色していたフィリップは、ある1人の美しいドイツ人女性と出会う。やがて穏やかな時間を過ごすようになる2人。しかしリザは、「あなたはいつも怯えてるように見える」とフィリップを知れば知るほど心配するようになり、ついにフィリップは「俺はユダヤ人だ」と自らの素性を告白、だが、ある日同僚がドイツ人女性と交際していたという罪で絞首刑に処される場面に出くわしてしまう—。
「2人でここから逃げ出そう」—復讐から始まった想いが、やがて、本物の愛に変わっていく。最後、フィリップが向ける銃口の先とは?2人の男女が時代に翻弄されながらも、愛のために運命に抗い、戦う姿を捉えた映像となっている。
場面写真は、ナチス・ドイツを賞賛するパーティが開かれる中、総統ヒトラーへの賞賛を表す“ハイル・ヒットラー”のジェスチャーをする人々に囲まれながらも、固く口を閉じまっすぐ前を見据えたフィリップの姿を捉えたもの。その姿は決して消えることの無い<ナチス・ドイツへの抵抗>への意志を感じさせるカットとなっている。
ポーランドの作家レオポルド・ティルマンド(1920-1985)の自伝的小説としてポーランド当局の検閲の後大幅に削除されたものが1961年に出版された小説「Filip」。ティルマンド自身が1942年にフランクフルトに滞在していた実体験に基づいて書かれたこの小説、発刊後すぐに発禁処分。長い間陽の目を見ることがなかったが、2022年になってオリジナル版が出版された。
監督は、1990年代よりテレビプロデューサー兼演出家としてキャリアを重ね、21世紀に入って以降はポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督作品のプロデューサーとして、後期代表作である『カティンの森』、『ワレサ 連帯の男』、そして遺作『残像』まで製作を勤め上げたミハウ・クフィェチンスキ。その事実から導き出す魂の解放・自由奔放な姿を第2次大戦、ナチス支配下のドイツを舞台に官能的な要素を加えて本作を映画化、その大きな理由のひとつとして「ポーランドで愛する人を亡くしたユダヤ人の主人公は、そのような状況下で何を感じるでしょうか?私はティルマンドの本を心理的で緻密な映画にし、トラウマから感情が凍り付いた男の孤独を研究することに決めました」と明かしている。
『フィリップ』は6月21日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国公開