『コードギアス』シリーズや『ONE PIECE FILM RED』を手がけた谷口悟朗が、新たに原案・脚本・監督を務める映画『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』。このたび2024年1月5日(金)の公開にさきがけ、都内某所にて特別試写会を実施。さらに上映後には谷口監督によるトークが行われ、映画ライターのギンティ小林が進行を務めた。
荒廃したポスト・アポカリプス的な東京を舞台に、改造ヴァンパイアである主人公キサラギと、ヤクザ、不滅騎士団の苛烈な三つ巴の戦いがスクリーンで繰り広げられる本作。その迫力に客席の興奮も冷めやらぬなかトークショーに登壇した谷口監督とギンティからは古今東西の様々な映画やマンガのタイトルがいくつも挙げられ、本作がそういった作品群の遺伝子を継承していることが明かされる。
さらに、演出論やエンターテインメント論など谷口監督の深淵に迫るような話題が次々と繰り広げられたので、その一部を早速レポートしたい。
「本当は座頭市みたいなキャラクターを出したかった」
ギンティ:一足先に観させていただいて、これは本当に映画館で観るべき活劇だと思いました。「地獄の逃走劇」というサブタイトルが、すごく燃えます!僕が好きな実写のアクション映画/バイオレンス映画を思わせる設定やキャラクターが登場するんですが、そのまま使うのではなく、あくまで谷口監督のフィルターを通して再構築することで、今までにない世界観に仕上がっていると思います。
谷口:ありがとうございます。仕事柄というか趣味というか、私も当然ながらいろいろな作品を観るので、無意識に取り入れている部分もあるんだと思います。元々、私はアニメよりも実写の出身という感じなので、普通に作ると実写寄りの作品になってしまうんです。そこが特徴というか、アニメオンリーの方とは違うものが作れるのかなと。
ギンティ:谷口監督は『コードギアス』シリーズ(2006年~)にしても、まず設定が面白いですよね。日本を舞台にしながらも、僕たちの常識を越えたとんでもない状態になっているという。今作では街が壁で覆われた「クラスタ」になっていて、個人的には『ニューヨーク1997』(1981年)や『ジャッジ・ドレッド』(1995年/2012年)を想起しました。この設定はいかにして生まれたんでしょうか?
谷口:この映画というよりも、プロジェクトの大もとを企画する段階で「いろいろと展開できるようにしておこう」ということになったんです。クラスタにすれば、発表形態ごとに舞台を変えられるんですよ。正体がバレたからあっちのクラスタに移動しようとか、アメリカ的と言うのかな、荒野の中に点在する形にすれば自由度が増すので。そうなると、クラスタごとに特徴があった方が面白い。
ギンティ:そうだったんですか! 今回は新宿クラスタが主な舞台ですけど、監督の中で新宿はああいうイメージなんですか?
谷口:今も新宿はあんな感じじゃない?
ギンティ:ここで暮らしたくはないけど、スクリーン越しにはずっと観ていたい新宿でした(笑)。
谷口:新宿は、フロアごとに違うヤクザの事務所が入ってるビルがあったりするじゃないですか。そういう意味ではワンダーランドみたいな街なので、設定に使いやすいですよね。
ギンティ:あそこで暮らす人々の感じも面白くて、黒のスーツで『レザボア・ドッグス』(1991年)的なスタイリッシュさもあるんだけど、喋っている内容は『仁義なき戦い 頂上作戦』(1974年)で小林旭さん扮する武田明のようでもあるというか。
谷口:そうですね。あと、『男はつらいよ』の車寅次郎の口上も入っていると思います。脚本を書いていて、「俺はなんでこのフレーズ知ってるんだろう?」と思ったんだけれど、後から「ああ、寅さんだ!」って。
ギンティ:そういった映画が谷口監督の血肉になっているんですね。
谷口:なんだかんだ言って結局、自分の作品に入っちゃいますね。
『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』
人体実験によって改造人間となったキサラギは、ある組織に追われていた。
その組織とは、分断された「東京」の制覇を目論む不死身の吸血鬼集団「不滅騎士団」。
さらに、殺された親分の敵討ちを誓うヤクザたちも追っ手に加わり、全てを巻き込んだ大抗争へと発展していく。
「元から生きる理由は無いが、コイツらに殺される理由もない──」
改造されあらゆる武器を仕込まれた身体と自らの特殊な“血”を駆使して、キサラギの地獄の逃走劇が始まる!!!
制作年: | 2023 |
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2024年1月5日(金)より全国ロードショー