異類異形なサメ映画シーン
「サメが陸を歩いたり空を飛んだりする」、いわば低予算早撮りのみょうちきりんなサメ映画は、今やすっかりサメ映画の主流ジャンルかのように認知されている。このところは日本でも、<国産サメ映画>という触れ込みの新作サメ邦画(?)が、多くのインターネットユーザーの注目を集めている。少なくともSNS上では、依然として面白おかしくぶっ飛んだサメ映画が大人気のようだ。
一方、近年のリリース状況の実際としては、「主要人物が限定的な極限状況下で悪戦苦闘する」海洋スリラー系サメ映画が、変なサメ映画に代わって水面下でじわじわとその勢力を増しつつある。具体的なタイトルとしては、『海上48hours ―悪夢のバカンス―』(2022年)、『ジョーズ ザ・ファイナル』(2022年)、『ジョーズ・バケーション』(2022年)、『ブラック・デーモン 絶体絶命』(2023年)などが挙げられよう。
今回紹介する『シャーク・クルーズ』(2022年/原題:『SHARK WATERS』)も、そういった海洋スリラー系のサメ映画の中の一本である。制作はおなじみアメリカの低予算早撮り映画スタジオ、アサイラム社。トンデモ系サメ映画の金字塔、『シャークネード』シリーズや『メガ・シャーク』シリーズで知られるアサイラム社だが、ここ数年は『ホワイトシャーク 海底の白い死神』(2020年)や『シャークストーム』(2021年)のような、シリアス志向の作品にも力を入れ始めているようだ(その一方で、『ザ・メガロドン 怪獣大逆襲』[2021年]や『ムーンシャーク』[2022年]のようなイロモノも作り続けてはいるのだが)。
とにかく今回は、どうも何らかの心境の変化に至ったらしいアサイラム社が送る、渾身の“普通”サメ映画、『シャーク・クルーズ』を紹介しよう。
もちろん、この場合の“普通”とは、“面白さ”を意味しない。