なぜ今「セックスレス」を描くのか
いま、世界的に夫婦間の「セックスレス」を描くドラマ・映画作品が増えている。ヒット漫画を実写化した作品もあり、赤裸々なテーマだけでなくお話のクオリティも高いものが多いため、それが新たな需要を生んでいるのだろう。
日本では数組の夫婦が集まればその半分はセックスレスなんて調査結果も出ているそうだが、つまり多くの日本人にとって感情移入しやすいテーマということでもある。そんな身近な問題を描いた作品の“身に覚えがある”甘さと苦さが、ある程度現実を見つめはじめた世代を中心に支持されているのかもしれない。
『あなたがしてくれなくても』が描く既婚者のピュア恋とリスク
“世界的”と書いたが、主要テーマにセックスレスを掲げるのはアジア圏の作品に多い。「夫婦のタブーに切り込んだ、30代男女の禁断の恋愛ドラマ」と謳う『あなたがしてくれなくても』は、2組の夫婦のレス+αを描いた大ヒット作。登場人物たちは行為そのものに忌避感があるわけではなく、ゆえに複雑な人間関係につながっていくのだが、基本にあるのはピュア恋だ。
奇跡的に集結した美男美女の純粋と打算が織りなす人間ドラマをじっくり描き、各々の行動に伴うリスクも押さえているあたりも秀逸。最終回のやや意外な展開は視聴者の間で賛否を呼んだようだが、総じて“アリ”に収まったのは全話を通しての良バランスと、主要キャストの魅力あってこそだろう。
https://www.youtube.com/watch?v=Lckry6jnqeg
「堕ち」か「自由」か? 『セフレの品格』『それでも愛を誓いますか?』
現在、劇場版二部作が公開中の『セフレの品格(プライド)初恋/決意』は、レディコミ原作ということもありセックスレスとは基本無縁のように思える。しかし、出産や離婚など酸いも甘いも経験してきた登場人物たちの中には、“レス”がトリガーとなって現在(いま)がある人物もいることは明らかだ。
主人公はバツ2のシングルマザーで、高校の同窓会で再会した初恋の相手(バツ1の産婦人科医)と関係を持ってしまう。そんな大人たちが一心不乱にカラダを求め合う姿を通して、タイトル通り「品格(プライド)」 というテーマに帰結していく。城定秀夫監督はR18指定をギリギリ避けるよう注力したそうだが、R15指定とは思えない過激な描写が満載だ。
一方、松本まりか&池内博之がレス5年目の子なし夫婦を演じた『それでも愛を誓いますか?』は、“普通”という理想を求めるあまり追い詰められていく男女を描いたドラマ。
キャストの演技力はもちろん抑え気味の演出も物語のリアリティを高めていて、いわゆるドロドロ群像パターンに依存しないタイトな構成も大きな魅力だった。
ここで紹介した作品はすべて漫画原作というのが日本らしいが、実写への落とし込みの成功が大きなヒットに繋がるのは世界共通。こうした潮流は今後もしばらく続くだろう。